
― 伝記を読むことの真価とリーダーの成長戦略 ―

日々の仕事の中で、リーダーとして、経営者として、次々に判断を迫られる場面って多いですよね。顧客との交渉、人材配置、チームの雰囲気、数字のプレッシャー…。気づけば「正解のない判断」を繰り返している、そんな実感を持つ方も多いと思います。
そんな皆さんに、今日はひとつ問いを投げかけたいんです。
「自分以外の人生から、何かを学び取ったことがありますか?」
経験には限りがある。だから「他人の経験」を借りる
よく「リーダーは経験の積み重ねで成長する」と言われます。確かにその通りですが、ひとりの人間が経験できることには限界があります。時間も、環境も、チャンスも有限です。
でも、歴史を振り返れば、私たちよりはるかに困難な時代を生き抜いた人たちがたくさんいます。経営の苦境を乗り越えた人、組織をまとめた人、失敗から立ち上がった人。そうした先人たちの「決断の記録」が、伝記です。

伝記を読むということは、他人の経験を「自分の経験」として取り込むこと。つまり
――他人の人生を一度きりで終わらせない、ということなんです。
人に関わる悩みこそ、伝記が効く
たとえば、部下のやる気が落ちている。チームの空気が重い。成果が出ない。そんな時、数値や理論では答えが出ません。
私自身、松下幸之助の言葉を思い出すことがあります。「人を疑う前に、 任せてみることや。」病弱な体で事業を興した彼が、この言葉を残しました。
この一言に出会ったとき、「信頼とは戦略でもある」という気づきを得ました。不思議と、今の自分の課題にも響く。これが、伝記が持つ「時間と空間を越える力」です。
伝記は“フライトシミュレーター”
私はよく、伝記を読むことを“フライトシミュレーターの訓練”に例えます。現場での判断は、まさに実際の飛行。失敗が許されない。一方で伝記は、安全な環境であらゆる状況を追

体験できる「模擬飛行」なんです。
徳川家康、渋沢栄一、稲盛和夫、スティーブ・ジョブズ…。どの人物も、決して順風満帆ではありませんでした。挫折や失敗の中で、彼らは何を考え、どう動いたのか。その思考のプロセスこそが、現代の私たちにとっての“教科書”になります。