
日本人にとって「勝つ」とは何か── 戦後80年の節目に考える、これからの歩み方 <「勝ち」のかたち、本当の勝ち負け、勝つとは>
10月5日
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8月に思うこと
毎年8月になると、あの夏の日を思い出します。戦争の終わり、そして新しい時代の始ま
り。そんな時期になると、ふと「勝つとは何だろう」「なぜ人は争うのだろう」と考えることがあります。

争いの形はさまざまです。国どうしの戦い、会社どうしの競争、家庭や職場でのすれ違い。けれど、どんな争いにも共通しているのは、それが人の「選択」から生まれているということです。私たちはどう選び、どう行動するかによって、争いを深めることも、分かり合うこともできます。
「勝つ」ことにとらわれすぎて、誰かを傷つけたり、争いを生んでしまってはいけません。では、「勝つ」とは本当は何を意味するのでしょうか。そして、日本人として、どのように生き、どんな行動を取るべきなのでしょうか。
歴史の中にある「勝ち」のかたち
日本人にとっての「勝つ」は、ただ結果を得ることではありません。昔の武士たちは、勝ち負けよりも「義」や「誠」「潔さ」を大切にしてきました。相手への礼を忘れず、自らの

心を律することこそが「勝つ」ことだったのです。
戦後の日本は、戦うことよりも「協調すること」「共に生きること」に価値を見いだしました。経済での成長を通して復興を遂げ、「平和であること」を新しい強さとしてきたのです。それは、「他者を倒す」勝利から、「共に歩む」勝利への転換でした。けれどその根には、昔から日本人が大切にしてきた、誠実で礼を重んじる心が流れ続けています。
今の社会と、ほんとうの「勝ち負け」
今の世の中では、国どうしの交渉も、企業の競争も、個人の評価も、みんな複雑に絡み合っています。けれど、それらもまた人の意思と選択から生まれるものです。どう選ぶかによって、対立にもなれば、協力にもなります。
ほんとうの勝者とは、ただ勝つことを目的にしない人ではないでしょうか。目的をはっきりと持ち、他者を 理解しながら、長く信頼を築いていく人。「勝つ」よりも「続ける」「生み出す」ことを大切にする人です。反対に、負ける人とは、なぜ戦うのかを見失ってしまった人かもしれません。
米国流と日本流──違いを知り、活かす
アメリカでは、成果を出すスピードや結果が重視されます。一方で、日本では、努力の過程や信頼を築くことを大切にします。どちらが正しいというよりも、大切なのは「自分たち

に合ったやり方」を見つけること。
日本人は、協調と誠実さを強みにできる民族です。それを活かしながら、世界の中で「日本らしい勝ち方」を続けていくことが、これからの時代に求められるのではないでしょうか。
これからの日本人がめざす「勝ち方」
これからの時代、必要なのは「他人を超える」よりも「自分を超える」ことだと思います。昨日より少し成長した自分になること。結果 よりも姿勢を、効率よりも継続を大切にすること。

そして、「共に勝つ」という考え方。ひとりで勝つのではなく、誰かと力を合わせて、価値を生み、信頼を育てる。それこそが、これからの「日本人の勝ち方」だと思います。
「勝つこと=相手を打ち負かすこと」から、
「勝つこと=価値を生み、信頼を得ること」へ。
この考え方の転換が、日本が未来へ進むための道しるべになるでしょう。
終わりに──勝利とは、平和をつくる力
戦争のように、誰かを傷つけて得る勝利は、もう二度と繰り返してはいけません。 けれど、平和の中で、価値を生み、信頼を築き、未来をつくるための勝利は、これからも追い求めていきたい。
「なぜ戦うのか」「誰と歩むのか」──この問いに答えながら生きていくとき、日本人の「勝つ」は、きっと世界に誇れる優しさと強さを持つものになるはずです。
筆者 屋代喜久






